大つごもりの福の神(10)


大急ぎで帰りよったら、またまた向こうから、やせほそって、足のふらつくやなおばあさんが歩いて来たげな。かかさんが 「おばあさん、おばあさん、このくれ方にどこえ行かっしゃるかね」 と声をかけえと、おばあさんは 「はい、わたしゃ、きのうから何もいただいちょうませんで、腹がへって、腹がへって」 と、やっとのことで声を出いたげな。


標準語訳

大急ぎで帰りかけていたら、またまた向こうから、やせほそって、足のふらつくようなおばあさんが歩いて来たそうだ。奥さんが 「おばあさん、おばあさん、この夕方にどこえ行かれるのですか」 と声をかけると、おばあさんは 「はい、わたしは、きのうから何も食べていませんので、腹がへって、腹がへって」 と、やっとのことで声を出したそうだ。
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