八多病院の開業の頃・・・

わが家には珍しく同居犬が居ませんでした。
そこで、我等親子は考えました。
「おとなしい大型犬が玄関で寝そべってるってよくなぁい?」
「ハイジ」のヨーゼフや「ネロ」のパトラッシュみたいな。

が、しかし、
開院から数日後のある日。
病院の玄関前に子犬を抱いた母犬が置かれていたのです。
毛足の長い黒の小型犬。
つぶらな瞳が可愛くて。

でも、母犬は間もなく死んでしまいました。
残ったのは、まだ、目も開ききらない子供達・・・

ふわふわの毛足の長い子供達はかわいくて、
男の子を一匹残して、あとは貰われていきました。

この男の子がくせものだった!!!

金色の長毛の四角い顔の太くて短い脚のこの子は
大変なフェミニスト(?)だったのです!

子犬の頃(イヤイヤ大人になってからも)この子=ロンは女性職員の人気者でした。
まぁ、愛玩犬であろう母親の血を濃く受け継いだ彼は
ふわふわ巻き毛につぶらな瞳、短く太い足。
アイドルになる要素は十分に持っていました。

が、しかし、

大人になった彼は、なんと!お嫁さんを連れてきたのです。
ある日気づくと犬は2匹になっていたのでした。

これで終わる訳がない!

男の子がお嫁さんを連れてきたら、当然!子供ができました。

でもね、でもね

子供達が乳離れをした頃・・・
なんと、子供達を残して、お嫁さんは出ていってしまいました。
かくして、父子家庭になってしまったのでした。

父子家庭のお子さん達には育ての親がいっぱいでした。
だって、病院だもの。
だって、ロンの子供達だもの。

院長を筆頭に、看護婦さん達や看護助手さん達が
先を争って子育てをしました。
おかげで、ずいぶんと人懐っこい、あまえんぼさんに育ちましたよ。