非常時アトピー・アレルギー医療支援ネットワーク(ENAA)発足準備趣意書



     ===== 阪神大震災に教わること =====

1995年1月、阪神及び淡路地区に甚大な被害をもたらした阪神大震災は、
私たちの現代の生活が、非常にもろい基盤の上に築かれていることをいや
がうえにも気づかせる結果となりました。
多くの生命が、この自然の本質を忘れた私たち現代日本人の油断の犠牲と
なってしまいましたが、いっぽう、この混乱と災難の中で、私たちがこれ
から大事にすべきものは何かということを教えるきっかけを与えてくれた
ことも事実です。

無数の小さいボランティアの力が、今回の震災による多くの困難や不安を
軽減し、忘れかけていた人と人の本来的なつながりを呼びさましてくれも
しました。

ところで、生命の危急に直面した今回の地震災害において、いち早い情報
の提供とこれに伴う行動の早さがもっと多くの生命を救ったかも知れない
という声を聞きます。
また、生命の危機というほどではなくとも、今回の地震災害により、環境
の激変からくるストレスにより、アトピー性皮膚炎やアレルギー患者の増
悪が高率に起こったということも報告されています。

30万人を越す避難者人数、そして、2万人以上になる疎開児童の中で、ボ
ランティアによる多様な支援が助けとなった人たちは決して少なくなかっ
たと思われます。
ただ、多くのボランティアの渾身の活躍にもかかわらず、必要なところへ、
必要な支援を、という点では、現場の混乱、情報収集の不十分さなどによ
り、かならずしも満足のいくものではなかったようです。

これは、アトピー、アレルギー支援ボランティアの場合、他の分野と違っ
て緊急性に乏しく、どこにどのくらい実際の支援を必要とする方たちがい
るのかというその辺の情報の収集が難しかったところにも原因があったの
でしょうか。
事前に細かく広域的な情報体制が組まれていれば、もっと効率的な支援活
動が行えたのではないかと反省されます。

=== 非常時アトピー・アレルギー医療支援ネットワーク(ENAA)発足へ ===

そこで、今回のような地震災害に類する非常時の支援ネットワークを機能
させるには平時の段階から、患者と医療機関のネットワークをつくってお
く必要があるということに思いいたりました。
このような反省点にたって、このたび、私たちは、非常時アトピー・アレ
ルギー医療支援ネットワーク(ENAA)の発足に向けて準備委員会をスタート
させていただくことになりました。

以下に、ENAAについて、説明させていただきます。

ENAA(Emergency Network for Atopy&Allergy Assistance)は、

1. アトピー情報COSMOS ネットワークに参加する患者と医療機関、民間
  企業相互の情報ネットワークを基盤として、
2. 地震などの非常災害時に、急性慢性のアトピー、アレルギー患者に緊
  急の支援物資などを提供し、医療機関には平時の医療機関どうしのネ
  ットワークをもとにした災害地域内外の、さまざまな医療支援活動を
  行う。
3. とくに、患者の避難、疎開などに伴う慢性化、増悪化に対する長期的
  な支援活動を実施する。

 これらを活動目的とした、全国広域的な医療支援ネットワークを目指し
 ます。

具体的には、ENAAは、MAT(Medical Assistance Team)とVAT
(Voluntary Assistance Team)の二つのチームから、構成されます。
MATは、平時の医療機関どうしのネットワークを利用した緊急医療活動を
行う医療チームであり、VATは、MATの医療活動を支援するため、情報の
収集提供を行ったり、物資の移動、運搬にあたる一般のボランティアチー
ムです。

MATとVATの連携により、より効果的な災害支援活動を展開していきます。
もちろん、これらは、地域の既存の医療ネットや行政から要請される救急
医療活動を妨げるものではなく、むしろこれを補完、支援するものである
ことを基本にしていきます。

そして、いずれも インターネット、パソコン通信を始めとした情報ネット
を緊急時に生かして、災害地の情報収集活動にあたるとともに、すみやか
に、災害地域内外に向けて情報発信を行うことによって、災害による人的
被害を最小限にくいとめるため尽力していきます。

平常時の情報ネットワークが、災害非常時には、すみやかな医療救急活動
に生かされる。
そんな、フレキシブルなボランティアネットワークが、行政と民間の中間
で活躍できればと期待しています。

つきましては、前述しましたMATとVATの募集をこのたび行わせていただ
きます。
そして、ENAAの準備委員会を通じ、今後のENAAの活動方向をインターネ
ット上で討議していく中で、MAT、VATの行動内容を決定してまいりたい
と考えています。


     ===== MAT、VATへ参加呼びかけ =====

最後に、MATとVATの行動細則(案)を記させていただきます。これをたた
きだいにして、ともに、非常時アレルギー&アトピー子支援ネットワーク
(ENAA)に参加し、積極的に行動していただける方を募集させていただきま
す。



MAT(Medical Assistance Team)

 災害地域内の病院、診療所等においては、被災傷病者の救命救急医療
 が優先的に行われるいっぽう、近隣の避難所に対する救護、巡回活動
 が要請される場合もあります。
 また、災害地域外においては、医療ボランティアの派遣、救急搬送患
 者の受け入れ、医療物資、食料、水等の補給など、はばひろい後方支
 援活動が要求されます。

 MATは、まず、災害発生時においては、地域の緊急医療体制を核とし
 た災害地域内医療機関の緊急医療活動を遂行するのに必要な情報支援
 活動や医療支援活動を行います。

 つぎに、第一次の救急医療活動に続く第二次医療活動としては、環境
 の変化にともなうアトピー、アレルギー症状の悪化、慢性化に対する
 治療ケア、また、災害地域内から疎開先に移動する患者の治療の引き
 継ぎなどが問題になってきます。
 ここにおいても、MATは情報ネットを生かして、診療データの受渡し、
 治療の引き継ぎなどを行っていきます。
 これらの活動により、精神的なケアも含めた、被災者患者の復帰を支
 援していきます。

 MATの活動は、あくまでも、各医療専門者の日常の医療活動の延長に
 おける任意の活動を前提とします。MATは、医療専門者から構成され
 ます。


VAT(Voluntary Assistance Team)

 上記のMATの医療活動を、さらに周辺、後方で支援するためのボラン
 ティアチームです。
 災害発生時には、いちはやく情報収集をおこない、インターネット、
 パソコン通信、電話、FAXなどを利用した緊急災害地情報を発信して
 いきます。災害地域内または近くに居住するVATを中心に、バイク、
 自転車、徒歩によるリアルタイムな現地情報を集めるだけでなく、
 場合によっては、近隣MATの緊急医療活動を支援するため、情報提供、
 物資運搬等も行います。

 この中には、アトピー情報ネットに参加している民間企業からの任意
 による支援物資の搬送も含まれます。
 災害地域外においては、情報ボランティアとしての役割も期待されま
 す。また、地域内において、連絡が途絶した場合には、インターネッ
 トによる情報中継基地としての役割も担います。
 VATの活動は、MATと同様、あくまでも個人の任意によるボランティ
 アであることを前提とします。VATは、年令、職業を問いません。た
 だし、通信のできる方を希望します。

以上、その他の細々とした活動の定義は、準備委員会を通じて、インターネ
ット上で討議、決定してまいります。


1995年10月
      
    アトピー情報COSMOSネット「ENAA」発足準備委員会

                委員長 三谷博明
      連絡事務局 神奈川県横浜市戸塚区柏尾町1029-1




前のページ平常時ホームページ 非常時ホームページ